2022年3月23日、明石トーカロ球場で開催された兵庫県社会人野球春季大会準決勝。
YBS播磨は準決勝で日本製鉄広畑を4対3で破り、大金星を挙げました。
日本製鉄広畑(旧チーム名:新日鐵住金広畑)といえば、野球界では言わずと知れた名門チーム。都市対抗野球への出場回数は31回、うち優勝2回。数多くのプロ野球選手を輩出し、現在も森原康平選手(楽天)、坂本光士郎選手(ヤクルト)がNPBで活躍しています。
3月5日のオープン戦では、1対9で敗れており、苦戦が予想されていました。
しかし、この試合を動かしたのはYBS播磨でした。2回表、4番・下方忠嗣(北海~奈良学園大)のレフト前ヒットを皮切りに2死一、二塁のチャンスを作ると、8番・中嶋良平(関西~立正大)のセカンド横へのテキサスヒットで1点を先制します。
ただ、そのまま押し切れる相手ではありません。3回裏に1番・向井選手の犠牲フライで同点に追いつかれると、6回裏には3番・西川選手、4番・佐々木選手、5番・椎名選手に3連打を浴び、1対3のスコアで終盤戦を迎えました。
さらに6回表から日本製鉄広畑のマウンドに上がっていたのは、社会人屈指のサイド右腕として知られる川瀬投手。正直、敗色濃厚といっても過言ではありませんでした。
それでもYBSナインは諦めていませんでした。8回表、1死から9番・川北陽大(滝川二~奈良学園大)、1番・新宅真弥(広島新庄~高知工科大)、2番・本干尾聖人(関西~岡山商科大)の3連打で1死満塁の絶好機を作ると、3番・高田誠也(広陵~東海大)がライト前へ2点タイムリー、さらには4番・下方のセンター前タイムリーで試合をひっくり返しました。
YBSベンチはすかさず新エース候補の萩森彩人(松山中央~高知工科大)を投入。大学時代には四国屈指の好右腕と知られ、ドラフト候補にも挙がっていた萩森が8~9回を無失点で抑え、4対3のまま逃げ切りました。
バックネット裏に陣取っていた他チームのスコアラー、アナリストたちからは「まさか勝つとは…」「チーム名なんだっけ?わい、びー、えす?」との声も漏れ聞こえて来るほどの大番狂わせでした。
「オープン戦では攻守のミスがでましたが、そこをどう修正するか選手たちと話し合ってきました。打撃ではオープン戦では相手の格に気圧されてボールを見すぎていた。今日は甘い球が来たら積極的に振れと指示しました」(YBS播磨・濵川皓監督)
どんな場面でもベンチからの声量は随一。YBS播磨のフレッシュな力を見せ付けました。
当日の日程はダブルヘッダー。勢いそのままに決勝・三菱重工West戦に挑んだYBS播磨。こちらも勝利すれば大金星…でしたが、中盤戦で崩れてしまい、0対10(7回表終了時日没コールド)、わずか1安打であっけなく敗戦。準優勝に終わりました。
「若いチームらしい良さと悪さが出ました。ムードがいい時はどこまでもノッていけるのですが、チームが苦しくなった時にはみんなで一緒に落ちてしまう。まだまだ経験、対応能力の差はありますね。それでも最後まであきらめずに声を出していた。準優勝という結果に自信を持ってほしいですね」(YBS播磨・濵川皓監督)
0対10、小雨で薄暮の状況でも「まだまだやれるぞ」と元気を振り絞っていた選手たち。4月に始まる都市対抗予選に向けて、自信と課題を得た一日でした。
【注目選手】中嶋良平(関西~立正大)
キャッチャーワーク抜群の扇の要。準決勝の日本製鉄広畑戦では、2回裏に2度の二盗阻止。反撃の芽を摘み取ったばかりか、スタンドに陣取るライバルたちに自慢の強肩を見せ付けました。
「相手が強いのは分かっていましたが、実際にキャッチャー目線で見て、意外とやれるなと手応えを掴めました。三菱戦でもいい球は決まっていた。弱気ではなく、向かっていく気持ちでこれからも投手陣をリードしていきます!」
と力強い言葉。YBS播磨の守りのキーマンになってくれそうです。
【注目選手】萩森彩人(松山中央~高知工科大)
四国リーグで鳴らした期待の好右腕。最速149キロのストレートに
スライダー、カットボール、チェンジアップなどを交える本格派でNPBのスカウトも注目する逸材です。
「追い込んでからのピッチングには自信があります。大学でもプロ志望届を出したのですが、指名漏れしてしまい、まだまだレベルアップが必要。真っすぐの球質やフォームのバランス、体力などの課題を解決して、いずれはプロの舞台で戦いたいです」
現状でもかなりの完成度を持った投手。プロ入りの「夢」に向けたレベルアップが毎試合楽しみです!